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クリエイティブシティ・ヨコハマの「映像文化都市」展開

横浜市の施策、クリエイティブシティについて特集するのもはや4回目、芸術や文化を街の中心部に持って来ることで街の魅力を高めようというこの施策、今までは「創造界隈」「横浜トリエンナーレ」を中心に御紹介しましたね。しかし、まだまだまだやっていることがあるのです。今回はクリエイティブ政策4本柱のうちのひとつ、「映像文化都市」についてお話していこうかなあと思っています。
映像文化都市、そう、文字どおり映像文化を街の中心部にもってこようという話なのですが、コンセプトのひとつとしては、「アジア」の映像作品の紹介、情報発信をつうじて「アジアの映像拠点」を目指していこうという、なかなか壮大なお話なのです。

クリエイティブシティ http://www.city.yokohama.jp/me/keiei/kaikou/souzou/index.html 
映像文化都市とは http://www.city.yokohama.jp/me/keiei/kaikou/souzou/index.html


最近は「現代美術」の世界でも、アジア旋風が吹き荒れています。先の「横浜トリエンナーレ」にもたくさんのアジアの作家が参加しましたし、創造界隈の拠点「Bank ART1929」などで開かれる展覧会にもアジアの作家さんが参加したりしています。
横浜トリエンナーレ http://www.yokohamatriennale.jp/
BankART1929 http://www.h7.dion.ne.jp/~bankart/
BankART1929で今行われている展覧会「Restaurant1929〜食と現代美術part3」ワークショップ http://www.h7.dion.ne.jp/~bankart/
また韓国などアジアに向かって開かれている福岡や九州では、いちはやくアジアの作家さんを中心に取り上げた企画をやっていますし、世界を見渡しても中国を中心としたアジアの現代美術の作品がべらぼうに高く取り引きされていたりと(日本のバブル期に比較されたりもしてますよ)、とにかく今、美術といったらアジアに注目すべし、といった趣があるのです。

さて、一応「映像」ということにとても関係のある「現代美術」という芸術ジャンル自体の説明もちょっとしておきましょう。今まで美術館といえば、ゴッホセザンヌダヴィンチやフェルメールなど、西洋の昔の作家の油絵やデッサン/水彩画などを中心に展示しているイメージが殆どだと思います。実際いまでもそういう展示のほうが圧倒的に多いのですが、この頃はそういう展覧会だけではなく、「現代美術」といったジャンルの美術を中心に展示した展覧会も多くなってきたのです。
かの六本木に聳え建つ六本木ヒルズの巨大なスペースを使った「森美術館」をはじめとして、木場にある「東京都現代美術館」「東京都写真美術館」「オペラシティー」など超メジャー級の美術館で展示される主な作品は、殆どこの「現代美術」といわれるジャンルのものなのです。
「現代美術」は文字どおり現代の美術作家が創った美術の総称であるとも言えるのですが一般的な解釈としては、上野都美術館で行われるような公募展の日本画や油絵のような展覧会の作品は現代美術とは呼びません。一体何が違うのでしょう?
それは、自分の言いたいことを一番表現しやすい素材をその都度使っていくスタンスの作家さんが現代美術作家と呼ばれることが多いというところがキーポイントなんです。
もちろんそういう人の中にはずっと油絵だけで表現している人もいれば、ドローイングだけで表現している人もいますが、意識としては「自分の思っていることを表現しやすい素材」で作品を創っている人達ということです。
つまり、油絵や日本画などの「技法」そのものを極めよう、というのが目的というよりも、なんだか思想的、哲学的なスタンスなんです(勿論技術も重要視はしますが)。当然自分の思ったことを一番大事に表現したいので、作品に使う素材は実に多岐にわたっています。その中でも「映像」というのは最近10年、20年で現代美術の世界ではとっても急速に普及した作品表現の素材なのです。森美術館でも現代美術館でも、足を運べば何らかの映像作品に出会ったりする機会が多いでしょう。
まあ、世界は今高度情報化社会と呼ばれていて、インターネットとかハイビジョンとかケイタイだとか色んなものがありますが、それも全部映像。当然、社会の傾向を敏感に捉えることに巧みなアーティスト達は、映像作品をいっぱい創るようになったというわけ。そんなこんなで「アジア」と「映像」は今、美術界の中でも非常に重要なキーワードなんですね。



さてさて前置きが長くなりました。これから横浜で実際にどういった「映像都市」にむけた試みが行われているのか、観ていきましょう。まずは「東京芸術大学大学院映像研究学科」の誘致です。
東京芸術大学大学院映像研究学科 http://www.fnm.geidai.ac.jp/
2005年、馬車道の旧富士銀行建物を改修して校舎にしました。それは創造界隈地区にあって、主に視聴覚室、録音スタジオ、編集室、講義室などに使われています。しかし、それだけにはとどまりまらず、1年後の2006年には新港パークのとなりの巨大な土地(客船ターミナルだったらしいです)に「新港校舎」を創りました。そこには広大な撮影スタジオやギャラリーがあるそうです。いいですね、こんなに贅沢な環境の下学べる学生さんはうらやましい。しかも教授陣がすごい。かの北野武監督、黒沢清監督などの巨匠が並んでいるのですから。
次は、ヨコハマEIZONE〜映像文化都市フェスティバル〜です。
ヨコハマEIZONE〜映像文化都市フェスティバル〜 http://www.y-eizone.jp/
2006年7月、赤レンガ倉庫、芸大院映像研究科、ZAIM、BankART1929、万国橋SOKO、北仲WHITE&BRICK、など創造界隈などの歴史的建造物を活用した六つの建物で、映像フィスティバルを行ったのです。わずか一週間ちょっとでしたが来場者はなんと33000人を集め、大盛況のうちに幕を閉じました。また今年も行われるらしいという噂を聞きましたが、是非また大々的にやってほしいものです。
また、ASIAGRAPHというイベントもありました。
ASIAGRAPH http://www.loftwork.com/AG/
こちらは去年、横浜の神奈川県民ホールで11日間行われて入場者数は3043人。日本製アニメやCG、ゲーム等の影響を受けて発達したアジア独自の表現様式によるCG作品の展示で、なんと展示作家200人、展示作品300展という豪華な展覧会で、中国100人、韓国16人、台湾20人、そしてインドからの作家もいるなどまさにアジアでした。

次は、「横浜学生映画祭」。こちらはもう5回もやっているんですねー。
横浜学生映画祭 http://www.ysff.jp/ysff5/index.html
こちらも日本だけではなく、中国電影学院や国立映画大学などが参加して国際色豊かなんです。2007年の開催地は情報文化センターに決定したそうです。




映像文化都市構想は映画とか現代美術、アニメーション、ゲームといった分野だけではなく、広く創造的産業が集積することをめざしているのです。パフォーマンス、演劇等のエンターテインメント産業、あるいは音楽やデザイン、建築などもふくめて刺激的な街が生まれ、新しい産業が生まれる可能性が高めるような事業なのです。
そういった事業者が横浜に来るための助成金制度や人材育成制度もあります。
企業等立地促進助成金制度http://www.city.yokohama.jp/me/keiei/kaikou/souzou/project/cultural/production.html
人材育成http://www.city.yokohama.jp/me/keiei/kaikou/souzou/project/cultural/bring.html

ほかにも、映画などのロケをサポートする事業などもあります。
横浜フィルムコミッション事業
http://www.welcome.city.yokohama.jp/film/1000.html
こないだも、日本大通で某有名なドラマの撮影をやっていました。


そんなこんなで、横浜にはいろいろな映像文化が根付きつつあるのです。ではでは、今日は「映像文化都市」構想をお届けしました!


著者:山本浩生 簡単なプロフィール
私は、現在は主に横浜を拠点にアーティストとして活動しています。東京出身なのですが、横浜のアートがいま非常にあついのを察知し、約2年前に横浜にふらふらと拠点を移してきた次第であります。横浜では北仲ホワイトにポロニウムという団体を創って入居していました。
http://polonium.jp