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気分は外交官〜山手イタリア山庭園〜


 横浜には古くからの建物が多くあるが、商館・ホテル・銀行など貿易に関係する建物は山下町に比べると山手には個人住宅や教会、ミッションスクールなどといった生活に関係する建物が多いのである。
これは筆者の個人的見解ではあるが、洋館のある古き良き街並を存分に味わいたいとすれば、はっきり言って横浜・山手よりも神戸・北野の方が濃い。北野は建築時そのままの街並を維持しているからだ。山手の場合は関東大震災第二次世界大戦などの影響で元々建てられていたものは現存しておらず、現在山手にある洋館は他方から移築・移設されたものばかりである。神戸も阪神大震災が記憶に新しいが、現代の建築技術、保存・修復技術の向上から、関東大震災の山手の時ほど大きなダメージは受けずに済んだ。

 だからと言って横浜を否定するつもりは毛頭ない。横浜には横浜の良さ、神戸には神戸の良さがある。JR石川町駅を出て「ひらがな商店街」を元町方面へ通るとすぐ右側の大丸谷坂という坂を上っていくと、横浜の都心部・吉田新田を見下ろす丘へと辿り着く。JR根岸線のトンネルの真上に位置する場所に「山手イタリア山庭園」がある。かつて、1880年代にこの場所にイタリア領事館があったことから、この名前が付けられた。

 ゲートを入るとよく手入れされた芝生の庭があり、その向こうに「外交官の家」がある。これは明治から大正期にニューヨーク総領事などで活躍した外交官・内田定槌邸の西洋館部分を元々あった東京都渋谷区から1997年に移築されたものである。
 この洋館は内田が45歳のときにミッション系建築家のスコットランド系アメリカ人であるJ・M・ガーディナーに依頼して建築したものだ。この「外交官の家」とともにある西洋式庭園が見事にマッチし、気分は外交官である。
 そんな気分でその庭園から横浜都心部ランドマークタワーなどを眺めていると、新旧の文化が重なって自分がいつの時代にいるのかわからなくなって心地よい眩暈をおこしてしまいそうだ。

 この美しい庭園にはイチョウが見事に色付いている。やっぱり横浜はイチョウが似合う。そこを一段降りたところに「ブラフ18番館」と呼ばれるもう一つの洋館がある。これは関東大震災後に外国人住宅として建てられたもので、少々新しい。
戦後はカトリック山手教会の司祭館として利用されていたが、司祭館新築に伴い横浜市によってこの地に移築されたものである。

 半世紀から一世紀前にはこんなにも洒落た建物が軒を並べていたのか、と思うとなんとなくワクワクしてしまうのである


記事:田中 健介


・「よこはま百問」(参考文献)
http://www.kanaloco.jp/information/entry/entry10/

・「横浜線沿線 公園探訪」
http://www.natsuzora.com/may/park/index.html